第91回「東京圏という魔物」 2016年3月10日

明日、2016年3月11日(金)17時から東京都トラック総合会館7階大会議室で
「平成27年度東ト協ロジ研第3回オープンセミナー」が開催されます。
http://www.totokyo.or.jp/archives/8510

セミナー後は、懇親会があり、三橋も参加致します。是非とも、ご参加下さいませ。
お申し込みはこちらから⇒ https://ws.formzu.net/fgen/S60999655/

現在、「真・地方創生(仮)」の原稿が佳境に差し掛かっており、
「東京一極集中問題」について書いているのですが、戦後の東京圏は
高度成長期以降、地方から人材を吸収し、投資を集中させることで膨張してきました。

高度成長期のピーク期は、何と年間に40万人もの東京圏への転入超がありました。
大阪圏や名古屋圏の人口が横ばいになってしまった現在に至っても、
東京圏は毎年10万人前後の人口を地方から吸い上げ続けています。

結果的に、東京圏は人口、GDP共に「世界一」という巨大メガロポリスに成長しました。
2013年時点で、東京圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)の人口は3600万人。

先進国の中で、これほどまでに首都圏に人口を集中させてしまった国はありません。
他国の首都圏の人口が全人口に占める割合を見ると、
アメリカ、イタリア、ドイツが10%未満、ロンド、パリで15%前後です。
それに対し、日本は30%に接近しています。

人口が集中すると、各種のサービス業が興隆します。

何しろ、サービスは製造業の製品とは異なり「在庫」ができませんので、
消費地に生産拠点(サービスの供給拠点という意味です)を儲けることが合理的です。

東京は現在、世界最高の「美食の街」でもあるわけですが、
人口が集中することでマイナーな料理の飲食サービスであっても、
存続することを可能とするのです。

ちなみに、三橋が好きなミャンマー料理を楽しみたければ、高田馬場に複数軒あります。
セネガル料理やチュニジア料理、パラグアイ料理などなど、いかなる味か
想像もつかないような料理であっても、東京には幾つも「料理店」が存在するのです。

市場規模が大きいからこそ、
世界各国の多種多様な料理を提供する「外食サービス」が存在し得るのです。

もっとも、東京への人口集中は、極めて長い通勤時間、満員電車、
住宅価格の高止まり、待機児童問題に象徴される保育サービスの供給不足、
高齢者介護サービスの不足など、地方と比較すると生活環境面において
多くの問題を引き起こしているのはご存じの通り。

それ以前の話として、震災大国、自然災害大国の我が国が、
これほどまでに特定地域に人口を集中させて良いはずがありません。

しかも、東京圏は「首都直下型地震」の脅威が迫っており、
安全保障上、極めて問題があります。

本来、日本国民は「災害列島」である日本国で安全保障を維持しつつ
生きていくために、ある程度は「分散」して暮らさなければなりません。

分散して暮らし、各地域が経済力(モノやサービスの生産能力)を高めることで、
大震災等の非常事態が発生した際に、お互いに助け合うことが可能になるわけです。
困ったときは、お互いさま。情けは人のためならず、でございます。

とはいえ、経済成長「のみ」を考えた場合、先の外食サービスの例からも分かる通り、
人口が集中していた方が都合がいいわけです。特に、サービス業の存続のためには、
ある程度の人口規模が必要になります。

安全保障の確立のためには、人口が分散していた方が良い。
とはいえ、経済成長のためには、人口が集中していた方が良い。

上記を「両立」するためのソリューション(解決策)こそが、
実は新幹線に代表される高速鉄道なのです。

北陸新幹線が金沢まで開通したとき、長野のある経営者さんから
「忘年会を金沢で開こうと思っている」と言われました。
何しろ、北陸新幹線開通で長野-金沢間が最短1時間5分になりました。

長野の皆さんは、
「ちょっと、金沢で飲んでくる」
が可能になり、金沢の飲食サービス業の方にしてみれば
「長野まで市場が広がった」という話になるわけです。

東京圏という魔物への人口流入に歯止めをかけ、
同時に各地域がサービス業の市場を広げるためにも、
現在の日本には新幹線「網」の整備が必要であると確信します。

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