第58回「亡国の農地改革」 2015年7月16日

国会は安保法制一色に見えますが、実は「裏」で日本の国の形を変えかねない、
驚くべき法律改定が進んでいます。すなわち、農地法の改定です。

現在の日本の農地法は、基本的には農業関係者以外の農地取得を認めておらず、
法人企業の農地取得も厳しく制限されています。何しろ、農地を商業施設なり住宅地なりに
「転用」してしまうと、元に戻すことはほぼ不可能です。

農地が減ると、日本の「食料自給力」が弱体化します。
食料安全保障を確立する上でも、農地の転用や売却に規制をかけるのは当然です。

もっとも、すでに現在の農地法は、農地を所有できる「農業生産法人」として、
農事組合法人、合名会社、合資会社、株式の譲渡制限をした非公開の株式会社などを認めています。
農業経営を行うための農業生産法人であれば、一定の条件を満たせば、農地を取得できます。

株式会社が農業生産法人になるためには、
●農業および農業関連事業の売上高合計が過半を占めること
●役員の過半数が農業従事者であること
●議決権を有する株主が、以下のいずれかであること
 -農地提供者
 -農業への常時従事者(原則年間150日以上)
 -地方公共団体や農地保有合理化法人、あるいは農業協同組合や農業協同組合連合会
 -農作業を法人に委託した個人
 -継続的に取引関係がある個人もしくは法人
●農業関係者が総議決権の四分の三を占めること。特例として、加工業者など
農業関連事業者の場合、総議決権の二分の一未満までは議決権の保有は可能
と、かなり高いハードルを超えなければ、農業生産法人としての土地取得等は不可能になっているのです。

上記の農業生産法人の議決権について、今回の法律修正で、
「農業者以外の構成員の有する議決権等の要件に関し、
総株主の議決権等の二分の一未満まで認めるものとすること。」
に改められようとしているのです(現在、参議院で審議中)。

しかも、例により「外資規制」はなく、外為法の届け出のみで、「農業と無関係な外国資本」までもが
農地を所有する農業生産法人に49.9%まで出資できることになってしまいます。
株式会社で三分の一以上の議決権を持つとは、拒否権を保有するのと同じです。
何しろ、株式会社の特別決議は、出席株主の議決権の三分の二以上を必要とするのです。

具体的に書いておくと、例えばアメリカや中国のファンドが日本の農業生産法人に
三分の一以上出資し、「農地を持つ企業」の経営を左右することが可能になってしまうのです。

まさに、国の形を変えかねない「大改革」なのですが、新聞などではほとんど(というか全く)報じられていません。
この手の「大改革(というか「革命」?)」が静かに推進されているのが、現在の日本なのでございます。

というわけで、上記以外にも複数ある「亡国の法律修正」について世に問う
「亡国の農協改革(仮)」、ようやく書き上げました。

今週も最後までお読み頂き、ありがとうございました。

コメント数:3

  • 農地は、実務者に割り当てられるものでしょう。
    これ以上、農地を減らしたら不安です。

  • この点に関して外資規制は必須のものと考えます。農地だけでなく土地取得一般に関しても一定の規制は必要でしょう。太陽光発電事業に関しても同じことが言えます。日本の政治家や役人というのは、このような当たり前のことに気がつかない愚鈍な人ばかりなんでしょうか?
    それとも、わが国の国内的な何らかの事情・・・我々の知りえない所での利権争いとか・・・そういうものが絡んでいるのでしょうか?(太陽光発電に関しては、マスコミの偏向政治宣伝に踊らされて当時の売国民主政権を選んだのがほかならぬ我が同胞国民ですから、とにかく今後、次善の策や法・規制改正などで営々と正常化に取り組んでいかなければならない、としか方法論は考えられませんが。)

    円安・インフレ導入、外交・安保法制などの安倍政権の基本政策にはおおよそ賛成ですし、安倍政権に代わる信頼できる政治勢力が全く見当たらないのも確かですが、やけに女性活用に前のめりになっている部分なども含め、腑に落ちない点は多々あります。

    三橋さん、今後も政治の問題点の洞察と指摘、頑張ってください。大いに期待しています。

  • 我流キンちゃん

    まさに、沖縄の知事さんたちの様なところでは中国人のものになってしまうでしょう 他のところでも裁判沙汰になれば認めざるを得ませんね これが辺鄙な日本中の海岸べりに点在するようになったら 終わり(´・ω・`)すね これは、聞かないほうがよかった こんなことを決めてるんですか 会社人間の時は我々にも農地を使わせろと役所を責めていましたが グローバル時代では日本人だけとはいきませんね  ああ、恐ろしい! でも対策あるんでしょう? 先生、教えてください 年間会員になりますから それにしても、誰も騒ぎませんね!

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