第87回「愚者の極み日本政府」 2016年2月12日

2月9日。ついに、長期金利(十年物国債の利回り)が
マイナスに突入してしまいました。
(本稿執筆時点では、0.03%とプラスに戻しましたが)

なぜ、国債がマイナス金利になってしまうのか。
もちろん、日本政府が国債を発行すると、
「カネを貸した銀行(等)から、金利をもらえる」わけではありません。

日本国債に買い手が殺到し、
「額面価格よりも高い価格で買う」金融機関が出現してしまった結果、
利回りがマイナスに「見える」という話になります。

何しろ、日本銀行は量的緩和政策で、国債を買い続けています。
量的緩和政策に基づく国債買取は、日銀当座預金残高の
「基礎残高」に該当し、0.1%の金利がつきます。

量的緩和政策による日銀当座預金残高増加分は、
1月29日に決定された「当座預金(政策金利残高)に
マイナス金利(▲0.1%)を課す」の対象にはならないのです。

後で日銀に(量的緩和政策に基づき)国債を売却すれば、0.1%の
金利がつく。とにもかくにも、現状、民間の資金需要不足が継続し、
銀行にあり余るおカネの運用先が見当たらない。

というわけで、日銀のマイナス金利政策により、銀行などの金融機関が
日本国債の購入に殺到。額面よりも高い金額で十年債が取引されるに至り、
長期金利がマイナスになってしまったわけです。

ところで、財務省は2月10日、国債・国庫短期証券の総額である
「国の借金(正しくは政府の負債ですが)」が15年12月末時点で
1044兆5904億円となり、
「15年9月末から9兆8340億円減少した」
ことを明らかにしました。減っているのは、
主に国庫短期証券ですが、いずれにせよ恐るべき事態です。
何しろ、日本政府が「借金返済」をしていることが明らかになったのです。

国債発行や財政出動を「やらなければならない」にも関わらず、
政府は緊縮財政路線を突き進んでいます。
政府がプライマリーバランス黒字化目標を設定し、
緊縮財政路線を改めない理由は、例の、
「国の借金で破綻する!」
という「嘘」に足を引っ張られているためです。

長期金利がマイナスになるほど、金融市場が政府の借金(=国債発行)を
熱望している国で、「国の借金で破綻する!」とやっているわけですから、
まさに「愚者の極み日本政府」という感じでございます。

いずれにせよ、日銀の「最後の手段」であった
マイナス金利政策も効果が早々と消滅し、長期金利までもが
マイナスになった以上、人間としての知能がある以上、

「政府の国債発行と財政出動が必要」

であることが、理解できるはずなのです。

しかも、15日に15年10-12月期の経済成長率(GDP成長率)が
発表されるのですが、マイナスになる可能性が濃厚です。

それにも関わらず、政府が緊縮財政継続という思考停止状態から
抜けきれないとなると・・・日本は実体経済(GDP成長率)のみならず、
金融経済までもが麻痺する事態になりかねません。

現在の日本経済の状況は、政府の思考停止と日銀の政策的手詰まりにより、
皆さんが考えている以上に危険な状況に突入しています。

コメント数:4

  • 大変 恐ろしい話です。参考になりました。

  • 万馬券クラブ

    あのエコノミストと称する無知者たちはなぜこのことに気付かないんでしょうね。
    あっ、無知だからか…笑
    三橋先生が政府のブレーンとして呼ぶようなまっとうな政治家はいないもんでしょうか。
    この事実をどのようにすれば政府や国民に広く知れ渡らせることができるのでしょうね。

  •  日銀や政府の国会答弁(言い訳)を聴いてると、いつも思うのですが、

     親(国)が「手本を見せず」に子供(民間)に対して、あれやれこれやれ言っても
     子供(民間)はやらないでしょうね。

     物事をよりシンプルに捉えれば、誰しも分かりそうな事なんでしょうがね。

     正しい解答が出てくるのは、いつの日になるのやら。(ため息)
     
     

  • 日本は債権国である事をどうして隠さなければならないか、
    財務省には知られたくない財産というものがあるのでしょうか。

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