第60回「プランテーション」 2015年7月30日
世界には、実は農業は「二種類」しかありません。
自らが食す、あるいは「国民の胃袋を満たす」ための国民農業と、
他者に売却して「儲ける」ことを目的とした「商業農業」です。
商業農業においては、過去に欧米が東南アジア諸国から
「主権」を取り上げ、穀物や野菜などの「国民の胃袋を満たす」ための
農業生産ではなく、欧州市場向けの砂糖や、帆船建造のための
チーク材、そしてデトロイトの自動車会社向けの「ゴム」などを
強制的に栽培させたという歴史があります。
すなわち、プランテーションです。
オランダは1830年代にジャワ島を獲得し、サトウキビプランテーションを開始。
ジャワの水田の五分の一をサトウキビ畑に変えました。
結果、ジャワ島ではコメ不足が発生し、住民が飢餓状態に置かれます。
同時期にビルマを征服したイギリスは、
帆船の材料調達のためにチーク材のプランテーションを開始。
さらに、イギリスは二十世紀初頭からマレーシアで
ボムプランテーションを大々的に展開。イギリス人は何万種もの木々が
生い茂る豊かな熱帯雨林を「更地」と化し、ブラジル産のゴムを植えました。
しかも、地元のマレーシア人を追い出し、何十万人という
インド人を植民させ、ゴムを採取させます。
イギリスがマレーシアで採取したゴムは、
アメリカのデトロイトの各自動車会社に送られ、タイヤと化しました。
自動車が売られ、経営者や株主は大いに潤います。
同時に、マレーシアの豊かな自然は消滅し、マレー人の社会は破壊されました。
日本の農業は、「競争力をつけ、世界に打って出ろ」などといわれています。
例えば、自民党の平将明衆議院議員は、テレビのTPP討論番組で、三橋に対し、
「日本の農業は付加価値がある作物に特化すればいい」
と、主張しました。まさに、日本の農業を「国民農業」から「商業農業」に転換し、
自らプランテーションと化せという話です。
断っておきますが、三橋は各農家が個別に
「付加価値のある商業農業」を展開することに反対しているわけではありません。
各農家が何を生産するか、それぞれの農家が決定すればいいのです。
三橋は、国民主権国家の「政府」が、国民農業を疎かにする姿勢は
間違っていると指摘しているに過ぎません。
日本において、農協改革やTPPにより、穀物を中心とする
国民農業が弱体化し、「儲かる」商業農業が中心になったとします。
米豪などの天候不順で農産物の対日輸出が滞ると、
たちまち日本国民が「飢える」事態に陥るでしょう。
ちなみに、インドを植民地化した東インド会社は、
インド農民に綿布や芥子の生産、つまりは商業農業を強要します。
結果、小麦の生産能力が大きく落ち込んだインドでは、
19世紀だけで2000万人が餓死するという悲惨な状況に陥りました。
上記を理解した上で、それでも現在の安倍政権の農協改革や
TPPに賛成できるでしょうか、という話なのでございます。
今週も最後までお読み頂き、ありがとうございました。