第50回「大阪都構想住民投票を振り返って」 2015年5月21日

2015年5月17日、大阪市の「廃止・解体」(いわゆる「大阪都構想」)の
是非を問う住民投票が実施され、反対派が勝利しました。
冗談抜きで、歴史を変えた可能性がある住民投票でした。

今回の住民投票を主導した、橋下徹大阪市長率いる維新の党のやり方は、
典型的な「全体主義手法」だったため、今後のためにポイントを書き残しておこうと思います。

(1) 議会(大阪市議会)で否決された構想を、住民投票に持ち込み、
首長が直接民主主義に訴える手法が間接民主制の国では許されない。
(そもそも、住民投票とは「住民」が提議すべき手法)

(2) 大阪都構想というネーミング自体が、真実を表していない。
「大阪市を廃止し五つの特別区を設置する構想」が正しい。

(3) ネーミング以外にも、
「二重行政廃止の財政効果は4000億円」
(実際にはゼロに近い上、600億円の初期コストがかかる)

「都構想の協定書が総務省の「お墨付き」を得た」
(総務大臣は「協定書に特段に意見はない」と述べただけ)

「大阪市から大阪府に移転される財源2200億円は、大阪市内のみで使われる」
(府議会の議員構成上、ほとんどが旧市外で使われることになる)

「反対している学者はほとんどいない」
(実際には賛成している学者が高橋洋一氏、植山信一氏、
 佐々木信夫氏の三名のみ。しかも、全員が大阪維新の会と繋がりがある)

など、様々な「ウソ」を堂々とついた

(4) 大阪市役所を「敵」と設定し、市民のルサンチマンを煽った

(5) 反対派の論客(藤井聡教授など)を吊し上げ、誹謗中傷、個人攻撃を繰り返した

(6) マスコミに堂々と圧力をかけ、反対意見を封じ込めようとした

(7) 「二重行政の廃止」「OneOsaka(ワン大阪)」など、
スローガンを連呼することで、大阪市民が「考えること」を防ごうとした

こうして箇条書きにしてみると、本当に「とんでもない連中」でした。
やり方が、そのまま初期のナチスです。

住民投票の結果は、反対が70万5585票、賛成が69万4844票。
その差、わずか1万741票。有効投票総数に対する「差」の割合、0.77%。

最低投票率が設定されていないため、1%に満たない得票差により、
日本国の運命が変わったことになります。
厳密には「悪い方向に変わることを防げた」に過ぎませんが。

「敵」を創造し、攻撃。国民を分断することで権力を握ろうとする連中は、
今後も出てくるでしょう。ある意味で、民主主義国の宿命でもあります。

住民投票が反対派の勝利に終わると、今度はマスコミで一斉に
「高齢者が」「大阪南部の生活保護受給者が」などと、新たな「敵」探しが始まりました。

上記の類の「全体主義的手法」に国民が引きずられないためには、
彼らのやり方を「知ること」が大事です。
そういう意味で、維新の党は今回、典型的な「全体主義手法」を駆使することで、
最高のケーススタディを日本国民に提供してくれたと言えないこともないわけです。

今週も最後までお読み頂き、ありがとうございました。

コメント数:2

  • とてもわかりやすく整理されていて、腑に落ちました。

  • みーちゃんのパパ

    私は大阪市在住で、橋元市長を支持してます。在日や同和問題はマスコミで取り上げられませんが、逆差別があります。
    この問題を最初に取り組んだのが関元市長ですが、利権を享受出来なくなる各団体が平松氏を推薦し、市長職を追われてしまいました。
    橋元市長の下品な点は好きになれませんが、多くの既得権益を打破しようとしてくれた彼を支持している人が賛成票に投じたと思います。
    大阪の闇は深いということですね。

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