第90回「日本「新」社会主義宣言」 2016年3月3日
多くの日本国民が勘違いをしているように思えるわけですが、
社会主義と「対」になる言葉は、資本主義ではありません。自由主義です。
「極端な社会主義国」の代表が、今は亡きソ連になります。
ソ連は、あらゆる経済活動を規制でがんじがらめにし、
全てを「計画」に従わせようとしました。
企業や労働者間の競争は存在せず、結果的に生産性向上のための努力が
行われず、人々はモノ不足、サービス不足に苦しめられることになりました。
逆に、「極端な自由主義国」の代表が、
現在の(あくまで「現在の」)アメリカになります。
レーガン政権以降のアメリカでは、政府の規制を緩和、撤廃し、
市場原理に従い「企業活動の自由」を拡大していきます。
国境の「高さ」は引き下げられ、資本移動も自由化された結果、
アメリカからは良質な雇用を生む製造業が外国に流出。
極端に所得が大きい「1%」と、それ以外の多数派の低所得者層に、
アメリカ国民は「二分化」されていきました。
現在、アメリカでは所得上位1%が、所得全体の25%を
獲得するに至っています。これは、大恐慌期前のアメリカ同様に
「世界最悪の所得格差」の状況です。
さて、上記のソ連型と現在のアメリカ型の
「どちらがいいですか?」と問われれば、
「どちらも嫌!」
としか、回答のしようがありません。
少なくとも「国民が豊かになる経済」すなわち経世済民を望むならば、
ソ連型と現在のアメリカ型の間のどこかの地点、すなわち、
「国民の実質賃金が上昇し、所得格差が縮小し、中間層が分厚くなり、
完全雇用が実現し、過剰投資が国内に再投資され、内需拡大型で
経済成長を遂げることが可能な経済」
を目指すべきなのです。
そして、上記が実現できていたのが、「一億総中流」と言われた
高度成長期からバブル崩壊までの日本国でした。
無論、バブル崩壊前の日本に「問題がなかった」わけではありません。
公害問題は言うに及ばず、地方から東京圏への人口の移動が止まらず、
現在の地方衰退や少子化の原因になってしまいました。
さらに言えば、高度成長期の日本国民は
「水と安全は無料(タダ)だと思っている」と
揶揄されるほどに、安全保障に無理解でした。
逆に考えれば、
「東京圏から地方への人口移動を促し、かつ安全保障という
需要を満たすための生産性向上のための投資」
を推進することで、我が国は「地方分散」「安全保障強化」「少子化解消」
そして「経済成長率」という課題の全てを一気に解決できることになります。
しかも、都合がいいことに、
今後の我が国は生産年齢人口比率が低下していきます。
高度成長期と同様に超人手不足になり、生産性向上の機会は拡大していきます。
経済成長とは、供給能力不足(インフレギャップ)下の生産性向上以外では起きません。
社会主義も自由主義も、いずれも「善」でも「悪」でもありません。
単なるポジショニング、つまりは「位置」です。
各国は社会主義と自由主義という二つの「両極端」の間で、
自国の経世済民を実現するために最も適切なポジションを模索する必要があるのです。
現代の日本は、明らかに「過度に」自由主義の方向に寄り過ぎています。
結果、かつての「経世済民」は失われ、国家として現在のアメリカ型に近づいていっています。
この傾向にストップをかけるべく、三橋は徳間書店から
「日本「新」社会主義宣言: 「構造改革」をやめれば再び高度経済成長がもたらされる」
を刊行した次第でございます。
http://www.amazon.co.jp/dp/419864022X/
是非、ご一読下さいませ。
初めてコメントします眼から鱗です先生の数字に基ずいた明快な解説素晴らしいの一言感銘の至りです増す増すの御活躍を期待しております。そ