第88回「実質賃金と生産性、生産年齢人口比率」 2016年2月18日

2015年の日本の実質賃金は、現金給与総額の
速報値で対前年比▲0.9%減少になってしまいました。
インフレ率が下がってきたため、
15年は±ゼロ程度ではないかと思ったのですが、甘かったです。

ちなみに、現金給与総額の名目賃金、つまりは
「金額」で見た賃金は対前年比+0.1%でした。

現在の日本は、額面で見た給与は上昇(わずかですが)しているものの、
物価の上昇率に追いつかず、実質賃金が下落している状況にあります。

さて、安倍総理大臣は、国会答弁で実質賃金の低下について、

「景気が回復してパートで働く人が
 増えたため、一人あたりの平均賃金が低く出ている」 

と、答弁したのですが、これは二重の意味で「変」なのです。
何しろ、問題になっているのは「実質賃金」であり、
名目賃金(=平均賃金)ではありません。

そもそも、平均賃金は「上昇」しています。

加えて、パート雇用を除く「一般労働者」で見ても、実質賃金は▲0.6%でした。
パート、一般労働者の区別なく、実質賃金が下落している。
すなわち、「名目賃金の伸びが、物価上昇率に追いつかない」ことが問題なのです。

それでは、なぜ日本の実質賃金が下落を続けているのか。
ちなみに、日本の実質賃金はピークの1997年と比較し、
すでに一割近く下落しています。

参考【日本の実質賃金の推移(中期)】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_52.html#Jchingin

近いうちに、月刊三橋のメインコンテンツか特別コンテンツで
取り上げたいと思いますが、キーワードを一つだけ書いておくと「生産性」になります。

ところで、2015年の正社員が8年ぶりに増加したことが報じられました。
総務省が2月16日に発表した2015年労働力調査によると、
正社員数が前年比26万人増の3304万人になったのです。

もっとも、第二次安倍政権発足以降の三年間で見ると、
正社員の数は23万人減になってしまうのですが、いずれにせよ
昨今の「非正規雇用増、正規雇用減」という傾向が底を打った可能性があります。

理由は、別に安倍政権の政策の成果でも何でもなく、もちろん
「生産年齢対総人口比率の低下」という人口構造の変化によるものです。

生産年齢が総人口に占める割合が下がっている以上、
当たり前の話として雇用は安定化に向かいます。
と言いますか、向かわざるを得ません。

今後の日本経済の「成長」や実質賃金の「上昇」は、
上記の生産年齢人口対総人口比率の低下と「生産性」というキーワードに
よって実現されることになるのですが、おいおい解説していきたいと思います。

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