第86回「マイナス金利政策という所得移転」 2016年2月4日

日本銀行のマイナス金利政策は、日銀当座預金250兆円の内、
「量的緩和政策により増えた基礎残高」
には、これまで通り+0.1%の金利、
「銀行預金準備制度に基づくマクロ加算残高」
については、ゼロ金利。上記以外の、
「政策金利残高」
にのみ、▲0.1%の金利が科されるというものです。

政策金利残高は、現状ではほとんどないため、
実質的な影響はあまりありません。

が、間接的な影響はあります。
例えば、日銀のマイナス金利政策決定を受け、
大幅な円安が進み、一時的に日経平均は上昇しました。

もっとも、早くも円安株高効果は薄れてきてしまっています。
アメリカの非製造業関連の指数が悪化したことを受け、円高が進み、
日経平均は本稿執筆時点で17000円を割り込んでしまっています。

より重要なのは、日銀のマイナス金利政策を受け、
収益悪化(金利低下により)が確実な銀行が、
負担を「消費者」に回そうとしている現実です。

例えば、横浜銀行」は、これまで0.025%だった
満期まで1年の定期預金の金利を、普通預金の金利と
同じ0.02%まで引き下げました。

りそな銀行は、これまで0.05%から0.03%だった
満期まで5年から2年の定期預金の金利を、
いずれも0.025%まで引き下げ。

さらに、ソニー銀行も普通預金の金利について、
0.02%から0.001%まで引き下げ、
定期預金の金利も多くの期間で引き下げ。

預金金利の引き下げは、当然ながら預金者の損失になります。

日銀のマイナス金利政策で預金金利が引き下げられると、
「国債金利が下落したため、政府が得をし、
 預金金利が引き下げられたため、預金者が損をする」
と、預金者から政府への所得移転になってしまいます。

また、三菱東京UFJ銀行はマイナス金利政策を受け、
大企業などの普通預金に口座手数料を導入する検討を始めました。
すなわち、預金者に対するマイナス金利政策です。

今後、預金者へのマイナス金利が中小企業、家計にまで
拡大していくとなると、普通に「デフレ促進策」になってしまいます。

デフレ対策であるはずのマイナス金利政策が、デフレを促進するわけです。

結局、民間に資金需要が十分には存在しない状況で、
マイナス金利政策を決定した結果、肝心の、
「銀行融資や消費・投資が増える」
は、実現できず、預金者に負担がいく、という
バカバカしい結果がもたらされようとしているわけです。

政府の財政出動による需要創出という「正しい解」から
目をそらし続けている結果、各種の政策が「迷走状態」に
陥ってしまったというのが現在の安倍政権なのです。

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