第57回「ギリシャの真実」 2015年7月9日
不思議な話なのですが、ギリシャ危機について、
「ギリシャ人は碌に働かず、公務員だらけで、財政赤字を拡大して破綻した」
というウソ情報ばかりがマスコミで流れています。
事実は、ギリシャ人の労働時間はOECD最長で
(生産性が低いという話でもありますが)、
公務員対労働人口比率は主要先進国の中で日本の次に低く、
しかも2014年のギリシャは基礎的財政収支が黒字でした。
よくもまあ、ここまで出鱈目を流せるものだと、正直、感心してしまいます。
知っていて、ウソをついているのか。知らないで、何となく「雰囲気」で
ウソ情報を撒きちらしているのか、どちらなのでしょうか。
ギリシャが財政破綻(デフォルト)した理由を整理しておくと、
まずは生産性が低く、貿易赤字国であるという点が始まりです。
貿易赤字はギリシャの経常収支の赤字を拡大していきます。
経常収支赤字国は、貯蓄不足になります(統計的、必ずそうなります)。
国内の貯蓄が不足し、国債の消化が困難なギリシャ政府は、
特にユーロ加盟後は「共通通貨ユーロ」建ての国債を、「国際金融市場」に発行しました。
国際金融市場は、別にギリシャ政府にユーロを貸す義務はありません。
ギリシャ政府は資金調達に際し、ドイツやフランスの政府と「競争」をしなければならなかったのです。
結果、ギリシャ国債の金利は高止まりし(現在は10年物国債で20%!に達していますが)、
ギリシャから国債利子として「ユーロ」が流出していきます。
国債金利を引き下げるためには、中央銀行が通貨を発行し、国債を買い取ればいいのです。
インフレ率は上昇しますが、金利は下がります。
ところが、ギリシャはユーロ加盟国であるため、
自国でユーロを発行し、国債金利を引き下げることはできませんでした。
しかも、ギリシャはEUやIMFから緊縮財政を強要され、デフレが深刻化していきます。
名目GDPはピークから26%も縮小し、税収も不足します。
結果、ギリシャ政府は対外負債の返済が不可能になり、デフォルトしたのです。
要するに、ギリシャは、
「経常収支が赤字の貯蓄不足国」
「国債の通貨が自国通貨建てではない」
と、二つの財政破綻の基本条件を満たした状況で「緊縮財政」により破綻したのです。
とはいえ、緊縮財政が問題だったと「知られたくない人たち」が、欧州でも日本でも、
「ギリシャ人は碌に働かず、公務員だらけで、財政赤字を拡大して破綻した」
というウソをまき散らしているのです(そうとしか思えません)。
普通の人は、経常収支赤字の意味や、国債の通貨の意味を知りませんので、コロリと騙され、
「日本もギリシャのようになりたくなければ、緊縮財政を実施しなければならない」
というレトリックに引っかかるわけでございます。
今週も最後までお読み頂き、ありがとうございました。
こんにちは。
いつもありがとうございます。
さて、ギリシャの公務員比率は、わたくしも調べたことがあります。10%台でそう多くないのは目からうろこでしたが、問題はそこではなく、「公務員とその家族への年金支給の手厚さ」であると認識しております。
元公務員の方はもちろん、「公務員の家族を持っていた妻」などにも同等の年金を支給しているので、現在、その支給対象者は全人口の30%を超えているそうです。
この事はご存知でしたでしょうか?
もちろん、拘束時間の割には労働生産性が悪いことは事実です。しかし、このような社会福祉費用の増大を許した国民の無作為が招いた今回の結果だと改めて思いました。
データに誤りがありましたら、ご訂正してくださいませm(__)m
年金支給を減らすとGDPって増えるのでしたっけ?
ギリシャはPBを黒字化させるまで緊縮財政を実施したのに、今回の結果です。矛盾していないでしょうか?
データの誤りよりも、「社会福祉費の増大 → 今回のギリシャ危機」のロジック(論理的な道筋)を整理した方がよいと思います。おそらくたどり着けません。