第56回「ありがちなレトリック」 2015年7月2日
例えば、大阪都構想に反対すると、途端に、
「二重行政廃止で大阪が豊かになるのを、妨害するのか!」
などと、物凄くヒステリックな反論を受けていました。
二重行政廃止とは、「府」と「市」が似たような事業を
やっているのを廃止するという意味だと思うのですが、
「二重行政廃止」
から、
「大阪が豊かになる」
までの繋ぎのロジックが分かりません。
「豊かになる」の定義は、もちろん大阪市民の「所得が増える=市内総生産が増える」になります。
大阪市民の所得が増えるには、「誰かが消費、投資としておカネを使う」必要があります。
二重行政を廃止すると、府なり市なりが「おカネを使うのをやめる」という話になるので、
100%の確立で大阪の市内総生産は減ります。すなわち、大阪市民全体の所得が減るのです。
というわけで、上記のプロセスを説明して
「二重行政廃止で、なぜ大阪が豊かになるの?」と聞くと、答えられません。
要は、「そんなこと、考えたこともなかった」という話なのだと思います。
あるいは、農協改革に反対する三橋に、
「農協のせいで日本農業はダメになった。農家は肥料を高く買わされ苦しんでいる。
農協を株式会社化してグローバルな展開を可能とし、日本農業を復活させようとしているのに反対するな!」
と、怒られてしまいます。この手の「ありがちなレトリック」を使う人は、例えば、
「農家は別に、農協から肥料を買う義務はない。他の業者が安いならば、そこから買えばいいだけの話」
「世界で穀物メジャーであるカーギルやADMとグローバルに(ガチで)競合している
日本唯一の事業体が、全農という農業協同組合」
「全農は利益を追求する組織ではないため、安く日本に配合飼料を輸入し、農協や消費者に『得』をさせている」
「欧州やカナダ、メキシコの農協が株式会社化されると、瞬く間にカーギルなど穀物メジャーに買収された」
という事実を知っているのでしょうか。
知った上で、上記の「ありがちなレトリック」を使っているのならば
構わないのですが、そんな人は一人もいないでしょう。
大阪都構想の問題にせよ、農協改革にせよ、「知らない人」が
マスコミ経由で流れて来た「ありがちなレトリック」を信じ込み、
深く考えもせずにまき散らし、賛同者が増えていくわけです。
二重行政廃止で大阪市民の所得が増える。農家は農協から肥料購入を強制されている。
農協はグローバルなビジネスを展開していない。農協の株式会社化は常に正しい。
全部、ウソなのですが、何となく納得するレトリックばかりでしょう?
この手の「ありがちなレトリック」が社会に蔓延した結果、我が国の衰退が始まったのでございます。
他にも色々ありますので、皆様も是非、周囲の方(あるいはマスコミ)が
語っている「ありがちなレトリック」について考えてみてください。
今週も最後までお読み頂き、ありがとうございました。
結局 日本人は、マスメディアに騙されているのですね。
多くの人々は、経済活動(政府支出も含む)のことを、深く考えないで、マスコミのうわべの言葉で自分なり理解したつもりで、
話しているのですね。まったく同感です。
本当に先生がご指摘されているとうりだと思います。あまりにも核心をつかれたお話なんで、三橋先生を知る前の自分に当てはめると、背中が、ムズかゆくなるくらいです。
一見、そうだなァと思ってしまうマスコミの言葉にいかに操られてしまっていたのか、どれだけ脳をつかわず、脊髄反射のみで物事を決めようとしていたかが、今回のメルマガで改めて認識することがらできました。
先日、先生の当サイトの情報の読み方、という情報サービスの提供を受けました。日本語の歴史からご説明頂いてましたこともあって、今回のこのメルマガを一層深く理解出来たように思います。今までとは何か世界が変わって見えてくるような感じがしております。今後とも興味を持って先生のお話を拝聴していこうとおもおります。ありがとうございました
本当に先生がご指摘されているとうりだと思います。あまりにも核心をつかれたお話なんで、三橋先生を知る前の自分に当てはめると、背中が、ムズかゆくなるくらいです。
一見、そうだなァと思ってしまうマスコミの言葉にいかに操られてしまっていたのか、どれだけ脳をつかわず、脊髄反射のみで物事を決めようとしていたかが、今回のメルマガで改めて認識することができました。
先日、先生の当サイトの情報の読み方、という情報サービスの提供を受けました。日本語の歴史からご説明頂いてましたこともあって、今回のこのメルマガを一層深く理解出来たように思います。今までとは何か世界が変わって見えてくるような感じがしております。今後とも興味を持って先生のお話を拝聴していこうと思います。ありがとうございました
日本とアメリカの戦争の件ですが、当時の軍部の調査結果で日本対アメリカの生産力の差は20対1であったと聞いた事があります。昭和16年7月頃の時点で、判明いた調査を、軍部は握りつぶして、議論をすることなく、時の政府は戦争に踏み切ってしまった。
上記のような話を聞いた事があります。三橋先生の15分間のアメリカのデフレ対日本のインフレによる失業者差による生産力の差で勝敗が決まる。単純明快で分かりやすいですが?
もっと大きな本質を突いた要素を話して貰いたいです。
情報を深く読む大切なことですね。表と裏そして上から下、左右側面から先生の情報分析、楽しく勉強させて頂きます。
はじめまして。
その他のことは、実際に話したことはないので、確信をもってお話しできませんが、「農協に肥料を強制的に高く買わされている」ということは、本質的な問題ではありません。
問題は、以前なら有機農法・現在ならば無農薬(減農薬ではない)農法をやろうとすると、農協の構成員から嫌がらせを受けるということです。原因は様々ですが、カナダなどで起きたハイブリット訴訟の逆バージョンです。「お前だけでいい思いするなよ」という農家の人々が【農協】を支えているのです。これは、実際に私が見てきたことです。このようなことは各地で起きています。全農が悪の根源という意識があるようですが、それはそれ・これはこれ、なのです。
三橋さまがどれだけ実際の現場を踏破されてきたかはあまり存じ上げませんが、情報とは統計やねっとで公開されている部分と、公開されていないローカルな部分があるかと思います。
肌で感じる情報も合わせて検証していきたいと思っております。
(たとえば、北陸のグローバル化には期待が大きいですが、雪害の対策はずっと課題でした。これができれば北陸新幹線などは些末な事かと思います)
長々と、素人の意見を失礼いたしましたm(__)m
祖父母の代まで専業農家だったため、農協との付き合いが結構あった両親は、農協職員や、関係者の横柄な態度とか、えこひいきにいつもいやな思いをさせられて不満をもらしていました。だから私もよく知らないまま、農協なんて機械を売りつけたり、大きなバックを背にえらそうに構えた人たち、という印象が強くて、農協の果たしている大きな役割とか重要性などわからないまま、世間の風潮に流されていたのかなあと思います。もっとちゃんと考えるべきですね。