第45回「いわゆる「リフレ派」の終焉」 2015年4月16日

前回、日本銀行副総裁の岩田規久男教授が「間違えた」事実を解説しました。
個人的にも存じ上げている岩田教授が、学者として「どのように責任を採るのか」注目させて頂いております。

そして、もうお一方。内閣官房参与の浜田宏一教授。
2013年1月時点で、「インフレ目標」の重要性を繰り返し主張し、
「デフレ期待がこれだけ定着してしまった現在、個人的には、世界の有力経済学者の
言うように、インフレ目標はそれより高く3%でもいいのではないかと思います。」

と語っていた浜田教授ですが、2年間が経過し、物価上昇率(コアCPI)が
目標の2%に届くどころか、「ゼロ」に戻ってしまった現実を受け、
「原油、食料を除いた指標に注目し、それを1%くらいの
緩やかなインフレに持っていくことが妥当だと思う。物価ばかりを気にする必要はない」
と、いきなり「ご変節」をされてしまいました。

「原油、食料を除いた指標」というのは、コアコアCPIのことで、三橋は五年くらい前から、
「日銀のインフレ目標は【生鮮食品を除くコアCPI】ではなく、【食料・エネルギーを除くコアコアCPI】で見るべきだ」
と、主張していました。

理由は、「エネルギー」が入っていると、デフレ・インフレと
無関係にインフレ率(コアCPI)が変動しがちになるためです。

というわけで、インフレ率の指標をコアコアCPIに変えるというのは
(なぜ、今頃になって言い出したのかという点は置いておいて)ご尤もなのですが、
「物価ばかりを気にする必要はない」は、あまりにも無責任でございます。

ところで、岩田教授や浜田教授が「間違えた」理由は何なのでしょうか。

簡単です。「デフレは貨幣現象」と「デフレは総需要不足」という二つの考え方の
「いいとこどり」をしようとしたのが、岩田教授、浜田教授らが率いる、いわゆる「リフレ派」だったためです。

デフレが「貨幣現象」ならば、おカネを発行すればデフレ脱却が実現します。
デフレが「総需要不足」ならば、誰かがモノやサービスの購入(=需要)に支出しなければ、デフレ脱却は果たせません。

いわゆる「リフレ派」は、上記のいずれの立場にも立たず、真ん中の位置から、
「金融政策でおカネを発行し、中央銀行がインフレ目標をコミットすることで、
期待インフレ率を引き上げ、需要を創出し、デフレ脱却を果たす」
という、非常に中途半端な政策を主張してきました。特に問題なのは、
「期待インフレ率」を引き上げれば、国民がモノやサービスを買うため、需要が創出されるという部分です。

もちろん、期待インフレ率の高まりで需要が創出されるかも知れません。
とはいえ、されないかも知れません。まさしく「やってみなければ分からない」世界です。

それに対し、政府の財政出動は間違いなく需要を創出します。

政府が1兆円を消費、もしくは投資として使えば、最低でも「1兆円の需要」が生み出されるのです。
いわゆる「リフレ派」のデフレ対策は、その中途半端性故に間違っていたことが確定しました。
結局、デフレからの脱却は政府による需要創出が十分でなければ実現しないのです。

「間違っていた」ことを、間違っていたとして認められるか。
ここに、今後の日本経済の行く末がかかっているわけでございます。

今週も最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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