第37回「リアルポリティクス」 2015年2月19日

三橋経済塾第四期「経済時事」第二回講義が開催されました。
http://www.mitsuhashi-keizaijuku.jp/
第二回のゲスト講師は中野剛志氏でした。中野氏の講演を含め、すでにインターネットにアップされております。
これを機に、是非とも三橋経済塾へのご入塾をご検討下さいませ。(ちなみに、第三回の講師は青木泰樹先生、第四回は藤井聡先生がゲスト講師です)

中野氏は講演の中で、中東のISIL問題について、以下の通り、恐ろしく説得力があるといいますか、実践主義的な主張をされていました。
概要を書かせて頂きますと、
(1)人道支援だろうが、敵は敵
(2)「自衛」のグローバル化が必要
(3)イラク戦争に参加することで、ISILの誕生を支援した日本
になります。

そもそも、日本側がどれだけ「人道支援」を強調しようが、テロリストISILにとっては、「敵に支援する国は敵」なのです。
三橋も後藤さん、湯川さんの映像が公開された時点から、ラジオなどで、
「こちら(日本)側がどれだけ【人道支援】を強調しても、敵側は端からそんなことは理解しているため、ハッピーエンドにはならないでしょう」
と、語っていましたが、中野氏の仰る通り、確かに「敵に支援する国」は、人道支援だろうが何だろうが、敵なのです。

さらに、原発を再稼働しないため、中東依存度が高まっている日本は、「アメリカ以上」に中東へのコミットをしなければならない立場にあります。
安倍政権が中東に「人道支援」をするべきだったのか、否かを考えたとき、答えは「するべきだった」になるのです。
アメリカはシェール・オイル、シェール・ガスの商業化に目途がついているため、これまでほど中東に関与する必要がなくなってきています。とはいえ、日本は逆に中東依存度を深めてしまっています。

すなわち、中東の安定化は「日本のエネルギー安全保障」を維持する上で、必須なのです。日本が「普通の国」であれば、「自衛」の範囲を「グローバル」に広げなければならないという、厳しい時代に突入しているわけでございます。
そして、ISILという化け物を生み出したのは、アメリカのイラク戦争とフセイン打倒です。確かに独裁的であったものの、俗世的でもあったフセイン政権をアメリカが武力で打倒してしまった結果、現在の中東は「スンニ派」対「シーア派」が激しく争う環境となり、秩序が崩壊しました。
イラクでは、多数派のシーア派が政権を握り、少数派のスンニ派と政争を繰り広げています。(フセインはスンニ派でした)
アラブの春を経て、シリア、リビアが内戦状態に陥り、元々はシーア派のアサド(シリア大統領)を倒すために、スンニ派のサウジなどが支援していたグループの一つがISILというわけです。

ISILには、イラクのスンニ派(元、政府関係者や軍関係者など)が相当に入り込み、テロリストと化しています。
ちなみに、ISILが人質に「オレンジの囚人服」を着せた上で殺すのは、アメリカ軍がイラク戦争時にイラク人捕虜をグァンタナモ基地に連行し、オレンジ色の囚人服を着せて虐待したためです。始まりは「イラク戦争」なのです。
大元の「イラク戦争」にも参加したことで、日本もまた、ISIL跋扈について責任の一部を負っているわけでございます。
それにしても、ここまでリアルポリティクス的に中東情勢を語る論客は、三橋は中野氏以外に知りません。改めて、目を開かされた講演でございました。

今週も最後までお読み頂き、ありがとうございました。

コメント数:1

  • IS問題に対しては吉岡朋子 山尾大『 イスラーム国の脅威とイラク』.内藤正典 (イスラム戦争 中東崩壊と欧米の敗北) 、国枝昌樹『イスラム国の正体』の3点は参考になりました。
    それに比べ、問題になったエジプト訪問時の安部総理のスピーチの能天気さ、呆れます。ISに対する言及がどうのこうというレベルの問題ではありません。『あなたの国(エジプト)の中庸の価値観は素晴らしい』とかトンチンカンだろうとおもうのですが。シーシ大統領の中庸はすばらしいということか?選挙で買ったムスリム同胞団が聞いたら呆れるだろう。まだこんなスビーチを交わせる時期ではないのに、とおもうのだが。この時点ではアメリカでさえ武器供与をまだ停止し様子を見ている、対応に思案にくれているのに。

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