第44回「デフレの認識」 2015年4月9日

2013年に黒田日銀が発足し、岩田規久男副総裁の持論、
「中央銀行がインフレ目標をコミットメント(責任を伴う宣言)し、
量的緩和を実施することで期待インフレ率が上昇し、インフレ目標が達成される」
に基づいた金融政策が始まりました。

今月で当初のインフレ目標達成期限である「二年」が経過した
ことになるわけですが、インフレ率(コアCPI)は対前年比マイナスに
陥っている可能性が濃厚です(2月時点でゼロでした)。

なぜ、このような事態になってしまったのか。簡単です。
安倍政権が「デフレの認識」を間違えていたためです。

三橋は以前から「デフレは貨幣現象ではなく、需要不足」と繰り返してきましたが、
この「認識の違い」は、まさに決定的なのです。デフレが「貨幣現象」もしくは
「貨幣不足」、竹中氏式に言うと「マネーの不足」であるならば、確かに金融政策のみで
デフレ脱却できることになります。「不足」するおカネを発行すれば、デフレ脱却になります。

とはいえ、現実のデフレは貨幣現象ではなく、総需要(名目GDP)が
不足することで起きます。不足しているのはおカネではなく、需要なのです。

そして、金融政策でどれだけ新たな日本円を発行しても、それが
モノやサービスへの消費・投資(=需要)に向かわない限り、インフレ率はピクリともしません。

そもそも、インフレ率は「モノやサービスの価格」である以上、当たり前です。

岩田氏らの「金融政策中心主義(あえて「リフレ派」とは書きません)」は、
おカネが発行されれば「勝手にモノやサービスの購入に回る」という前提になっています。

もちろん、実際にはそんなことはないため、クルーグマンが97年に提唱した
フィッシャー曲線「実質金利=名目金利-期待インフレ率」の読み替え、すなわち、
「期待インフレ率を高めれば、実質金利が下がり、設備投資が増える(かも)」
という、期待インフレ率理論が利用され、「金融政策⇒需要創出」というルートが、
あたかも実在するかのごとく主張され始めたのです。

無論、金融政策により期待インフレ率が上昇すれば、実質金利が低下し、
設備投資が増えるのかも知れません。とはいえ、いくら増えるのか、誰にも分かりません。

上記の岩田理論は、何しろ財政出動を増やさない、あるいは歳出削減をしても、
「金融政策を拡大すれば、インフレ率は上がる(はず)」という理論になっているため、
財務省にとってまことに「都合がいいデフレ対策」といえます。

普通に財政出動で「需要不足」を埋めるのではなく、
金融政策=デフレ対策として報じ、消費者物価指数の上昇率が下がってくれば、
「更なる金融緩和で」
と叫び、政治家を何となくデフレ対策をやった気にさせ、肝心要の財政出動
による需要創出は行わない。「金融政策」と「緊縮財政」が同時並行的に進み、
デフレ化が進めば「更なる金融政策を!」。出口のない無限ループです。

岩田規久男氏は、日銀副総裁に就任する前は、散々に財務省を批判していましたが、
結局は「持論」により財務省に知らぬ間に取り込まれてしまったというのが真実なのだと思います。

今週も最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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